ヤマシャクヤクの斑入りには様々なタイプが見られます。
それぞれの特性には個性があり、区分できる特徴も見られるものです。
ここでは、それらのいくつかをご紹介します。
「白三光斑」
この仲間は白縞斑の雪白斑に銀のりや表層剥離などを絡めたキメラ斑ですが、通常の白縞斑との違いは主だったものは白斑や銀のりに緑のゴマ散り斑を絡めずにすっきりとした印象を受けるものを特定します。この系統の特性としては、本芸の時はいたって派手な白三光斑を現わしてとても美しいものですが、植え替えや株を分けたとき、株が弱った時などにはすぐに青葉になり易く、1年ごとの葉芸がことごとく変化する特徴があります。株立ちの場合でも派手な斑の脇に青葉が出る事がしばしば見られますが、これも株を弱らせないための自主防衛と捉えられます。このように自身の体調次第で自身をコントロールしながら変化していく斑入りたちなのです。実生も同様で、力を付けたい発芽当才から2~3年は全く斑を現わすこともなく、力がついていきなり派手な斑になることもしばしばです。ある意味特徴的な、ある意味とても癖のある華やかで人気の高い斑入りの一群です。
-
黄聖錦
白三光斑としては最も古くより知られた品種です。紺地が強く白斑の抜けも良い美しいもので、実生は入手も比較的容易です。
-
赤とんぼ
人気の高い白三光斑です。全体に大柄で茎は立ち上がり露受け状の草姿がとても美しい白三光の銘品です。
-
祖谷の太陽
全体に横に広がりやすく株立ちになりやすいものです。芽別れが多いので芽に力をつけたいものです。
-
大和
大柄で迫力のある白三光斑で、茎に赤みがありすっきりと立ち上がる姿はとても美しい逸品です。
-
白寿
白三光斑としては最も人気の高い品種です。やや小柄ですがまとまり良く、良く出来たときは華やかで美しいものです。
-
宴
近年発表の白三光斑の逸品です。写真はまだ芸が甘いですが、幅のある葉の全面に流れる白斑がとても美しく全体のまとまりも抜群です。
-
不動
白三光斑ではあまり伸びずにまとまりが良いものです。4番と呼ばれていた比較的初期の品種でやや大人しめです。
-
新不動
当初赤とんぼとして入手したものですが、全体の草姿やまとまりは不動に似ています。軸も赤みが強く特徴的です。
-
白カラコ
西祖谷産の無名白三光斑で、作りこむと花が唐子咲きに変化します。全体に葉が細く中型で軸も赤みがあります。
-
雪蛍
四国から北陸に渡った白三光斑の一つで、紺地が強くコントラストが良いものです。
-
酔美人
大柄の白三光斑で斑の出方はほどほどですが実生1年目から斑を現します。花もほんのり紅覆輪の2芸品です。
-
無名・中三光
小島峠産の白三光斑で、やや大柄で葉幅もありますがまだまだ未完成なものです。
-
無名
中津山産の白三光斑ですが、まだまだ株にならず未知なものです。
-
無名・白斑
珍しい九州産の白三光斑で、全体に大柄ですが斑の抜けはまだ疎らです。
-
白妙
白軸の白三光散り斑の逸品。良く出来ると透明感のある白三光散り斑を全面に出しますが、芽出しが遅く明るい方が芸を出しやすと感じます。写真は芽出しが暗くまだ未完成です。
-
白霊峰
滋賀県産の白三光散り斑で華やかな斑は時に葉に引きつりを見せるほど派手になります。実生1年目から斑を出しやすく安定しており人気も高いものです。
-
赤とんぼ実生
赤とんぼの実生で、時に白斑の部分には紅を帯びて美しい芽出しを見せます。年により紅が遅くまで残ることもあります。
-
祖谷の太陽実生
親元の手による実生ですが、全体の雰囲気から白寿との交雑も考えられます。やや小型で華やかな細葉の小型種です。
-
酔美人実生
酔美人の実生は1年目は派手ですが、その後2~3年はやや斑は落ちます。ただし実生の中には写真の様な銀のりを前面に散らしたタイプもあり、このタイプは比較的安定しています。
-
白三光斑実生
祖谷の太陽の実生として入手したものですが、おそらくは草姿から赤とんぼの実生と考えられます。
「ゴマ斑」(小島峠系)
ゴマ斑は俗に言う「小島峠」(おじまとうげ)系と呼ばれるヤマシャクヤクの一分野を築いた斑入りの総称です。斑としては葉脈の部分に緑を残して全面に散った規則性のある散り斑で、そこに銀のりを絡めた複雑な斑芸となります。芽出しの時期が早く斑としては紅を絡めた緑褐色で展開するものが多く、後に華やかなクリーム色地に緑散り斑となり開花後にはさらに白く変化するものや黄色く変化するもの、暗んで全葉に浅い緑をかけるものなどに変化します。四国祖谷地方で選別された系統ですが、古く30年以上前から栽培されていた系統で「きら星」や「いわし雲」など一世を風靡した品種もあります。当園で特に増殖に力を入れている系統は俗に言う「新小島」系と言うタイプで、これは早い時期に長野や山梨などに渡った小島峠系に山出し兄弟の株や黄刷け込み斑などと交配された系統のもので、暗まない綺麗な斑を長く保つものや後に白く変化する「白小島」系のものを多く選別しています。これらは芽出しの華やかさと暗みが少なく白抜けする、全面に散ったゴマ斑の美しさが特徴です。またときどき多弁花や緑を絡めた花などが咲く事も多く見られます。これまでは「小島峠」系としてひとくくりにまとめられがちだったこの系統ですが、育ててみればいずれも一線級の「小島峠」系の斑入りヤマシャクヤクたちなのです。基本は四国祖谷産ですが、古く各地に渡っている系統なので選別された県地域でそれぞれの地元の銘が付けられている個体もあり一部産地で混乱を招いているものも少なからず存在します。
-
きらら
ゴマ斑の中では大柄で作りやすい系統です。実生による斑の遺伝性が高く交配親としても良く利用されています。
-
いわし雲タイプ
ゴマ斑の中でも後に白く抜けるタイプで人気があります。白の部分がきついと少し作落ちすることもあります。
-
小島の銀
小島系としては芽出しの遅い系統で芽出しは黄色が強く出て後に白く変化します。銀のりを絡めてキラキラした美しい斑入りです。
-
祖谷の彩雲
全体に小型で纏まりの良いゴマ斑で、鮮やかな芽出しは後に暗んで渋い味わいを醸し出します。
-
祖谷の満月
ゴマ斑の最高峰の一つで、細かく散った黄色の散り斑はやがて白く変化して暗みません。緑の軸が特徴的で斑柄によく映えます。
-
満月の宝
祖谷の満月の初期実生で、元親に似てますが軸は赤軸です。自然結実の為に何かと交配されていると推測されます。
-
祖谷の夕焼け
ゴマ斑の中でも特異な品種で、全面に散らしたゴマ斑とややモザイク状の散り斑を交えます。斑は後暗みで次第に緑が濃くなります。
-
白小島
新小島系の1×56からの選別で、斑の部分が大きく鮮やかな黄斑はやがて白く変化し、銀のりを絡めた美しい斑に変化します。
-
湖畔の月
新小島系からの選別で、丸みのある葉に全面に散ったゴマ斑がとても鮮やか。斑はのちに少し暗みますが吟味を帯びて味わいがあります。
-
残雪錦
風変わりな斑入りで、本来はゴマ斑なのですが黄色地に緑の吹きかけ状の散り斑を多く交えた変化にとんだ斑芸を見せます。
-
富田錦
規則的な間隔で少し黄色味がかったゴマ斑を散らしたすっきりとした雰囲気の斑入り葉で、赤軸で草姿にも間隔があり特徴的。花も多弁化しやすい性質を持ちます。
-
暮坂
古く山梨に伝わる小島系からの実生選別で、鮮やかな芽出しには褐色の紅隈を絡めて独特の味わいを見せます。
-
夢
大柄のゴマ斑で草姿も葉も全体的に大きく迫力があります。親自体のゴマ斑は粗く少し地味なものですが実生で華やかな子を産むと言われています。
-
夢の誉
夢の実生選別の逸品です。全体に大柄で鮮やかなゴマ斑は殆ど暗まずに休眠まで美しさを保ちます。
-
夢殿
関東に古くから伝わる小島系で、株になりやすく斑もあまり暗まずに安定したバランスの良いゴマ斑です。
-
流星群
鮮やかなゴマ斑で実生継続性の高い銘品です。福島産との触書ですが形状から見て四国産の小島系の秀品と思われます。
-
キムラ54
少し霞がかったゴマ斑系の緑縞斑を流し染めた特徴ある個体ですが斑はどちらかというと暗みやすい性質です。花はオシベが白く退化しています。
-
無名
派手さはありませんが規則性のあるゴマ斑で株立ちになるとすっきりとした美しさを見せてくれます。ゴマ斑岡田系とも呼ばれ見飽きぬ斑芸です。
-
甲斐大和
古く山梨で栽培されていた小島系で大柄で華やかな斑入りです。大和は白三光に同名異種があるので分別の意味で甲斐大和と呼んでいます。
-
新小島56
新小島系の中でも親としての活躍が際立った品種です。白小島系で白斑に銀のりを絡めた実生の殆どはこの品種が片親の実生です。
-
無名・新小島1×56
まだ若い実生苗ですがゴマ斑と銀のりの出方に特徴のある派手な斑芸です。
-
無名・新小島系
初期の新小島系の親株の一つです。全面に散った鮮やかな斑模様は殆ど暗むことなく美しさを保ちます。
-
無名・新小島系
初期の新小島系交配の親で軸は赤軸。この株自体は少し暗みますが実生により華やかな子を多く選別出来ます。
-
無名・新小島系赤軸
鮮やかな斑模様と赤く染まった軸色との対比がとても美しい個体です。実生親としても良いものです。
-
無名・新小島系
南信濃で古くから作られていた小島系で溝口系と呼ばれていたものです。茎が少し立ち上がり大柄で斑も鮮やかです。花は時に多弁化します。
-
無名・新小島系
いかにも新小島系らしい整った斑柄で少し白く変化して美しさを保ちます。花は多弁化しやすい癖があり実生にも同様の癖が見られます。
-
夢紅葉
新小島系1×56からの選別で、芽出しの紅がとても鮮やかで美しい個体です。生育は遅くなかなか大きくなりません。
-
小島×赤とんぼ
一見小島系のゴマ斑ですが斑は暗む事が無く、株分けでゴマ斑と白三光斑に分離し、実生でも苗により同様の分離が見られます。
「白散り斑」
ヤマシャクヤクの斑入りとしては一般的なもので初期の頃の斑入りは殆どこの白散り斑が主でした。緑の葉の一部や全面に鮮やかな流れに沿った白く細かい斑を散らしたもので一部に刷け込み斑を絡めます。時には葉の全面が白くなり緑の砂子斑を散らすものや、クッキリと白と緑の源平に分かれる斑など見た目に派手なものも多く見られます。特に九州からは多くの品種が見出されていますが全体に大柄で迫力のあるものが多く見られます。佐渡からもいくつかの多様な系統が見られますが、その一部の品種は大柄で作り込むごとに迫力を増すものもあり自身の作を試される品種たちでもあります。派手なものは見た目に綺麗ですがいずれ葉全体が白化して光合成が採りにくく衰弱しやすいものもあります。また、芽出し派手ながら後に少し暗む系統のものもあり、見方によってはその色移りの妙も見飽きぬ吟味ある趣を感じる品種もあり色々と楽しめます。
-
無名・九州産
古くより栽培されている大型種。時に切れ斑を絡めるので株立ちにすると華やかです。
-
葵錦
派手さはないですが安定した散り斑を絡めます。まとまりの良い中型種です。
-
とんび実生
佐渡産の山鳶の実生選別で親に近い雰囲気の葉芸です。赤軸でエンボスの効いた葉に白散り斑を散らします。
-
とんび実生
とんびF2の中から選別したものです。丸葉でエンボスの強い独特の葉姿に白い斑を大胆に絡め、赤い軸色がより華やかさを演出します。
-
とんび実生
とんびF2からの選別です。この系統にしては黄色みが強く独特の雰囲気を持っています。色抜けも殆どありません。
-
伊那光
長野産の大柄な白散り斑です。紺地の強い葉に白散り斑を大胆に染めたもので花は小輪です。高地産のため少し暑がります。
-
加賀錦
北陸で選別されたものですが産地は不明です。葉に間隔があり横に広がりやすい性質があります。
-
吉野川実生
菱形の型の良い葉を大きく広げて葉の先端から流すように白の散り斑を流します。草姿が良く作り込むと迫力があります。
-
無名・広島産
葉にかすれるように白黄の散り斑を流し染める風変わりな散り斑です。全体にまとまりの良いものであまり大型にはなりません。
-
球磨川
九州産のビリ打ち状の白散り斑で芽出しの頃は黄色みが強く後に白く抜けます。全体に大柄で花は淡い紅覆輪です。
-
銀冠
九州産の白散り斑で比較的古くから栽培されています。葉の先端部に散り斑が集中する個性的な葉芸です。銀河や大星雲も同じ品種だと推測します。
-
無名・九州良
古くより知られた赤軸の白散り斑で作により大胆な切れ斑を絡めて華やかです。大柄で株立ちになると斑は少し地味になります。
-
無名・九州産
非常に大型の九州産の白散り斑です。草姿も豪壮で葉も大きく迫力がありますが、株での増殖は多くありません。
-
五木の打ち込み斑
九州産の大柄のビリ打ち白散り斑で、斑は暴れますがビリ打ちが強く芽だしに紅を絡めて独特の雰囲気を持ちます。
-
無名・五木八重咲き
大柄の五木産の白散り斑ですが斑はまだ未完成です。花は比較的安定した多弁ヘテロの形質があり珍しい一品です。
-
無名・流星光タイプ
九州五木産の大柄な白散り斑で紺地の強い葉に大胆に白の散り斑を流し染めます。斑が強く出過ぎる事がありなかなか育ちません。
-
御剣錦
広島産の白散り斑で芽により斑柄が変化する面白い葉芸です。株立ちになると白散り斑や紺散り斑に偽覆輪を絡める事もあります。
-
佐渡錦
古くより知られた佐渡産の白散り斑で、比較的安定した斑芸を見せます。少し迫力に欠けるので株立ちで楽しみたい品種です。
-
笹の雪
大柄な品種でやや細長い大きな葉を広げて白斑を大胆に散らします。草姿に特徴があり一見ヤツデの斑入りのような葉姿に見えます。
-
三頭山
山梨産の白砂子散り斑で、透けた赤桃色の軸で紺地の強い葉に連なるように白散り斑を吹きかけます。塩山などと同坪の品種です。
-
三頭山実生
三頭山の実生からの選別です。白散り斑を三光散り斑状に絡めた面白い味わいの斑です。引きつりが強いので栽培には少しコツがいりそうです。
-
山響(こだま)
古く九州産の実生選別と言われるもので、やや細めの葉に華やかな白散り斑を全面に散らして大きく横に広がった独特の草姿を持ちます。
-
山響タイプ
古い無名品で九州産です。全体に大きく広がるやや腰高の大型種で切れ斑を混ぜた白散り斑を全面に散らします。
-
雪姫錦
四国産の透け軸の中型種で、細かい淡雪の様な白散り斑を点々と染めます。実生小苗の時は全面に白散り斑を散らしますが、作り込むと下葉には余り斑が出なくなります。
-
太極図
九州産の非常に大きな葉を持つ白散り斑で、幅のある大柄の葉に大胆に白斑を散らします。迫力のある逸品です。
-
中津山錦
岐阜県産の白散り斑で、大柄で斑は全面に散りますが少し地味な斑模様なので株立ちで楽しみたいものです。
-
朝焼け
人気の品種ですが同名で数タイプ見られます。これは基本品種で大胆に白く抜けた斑は鮮やかですが葉焼けは余りしません。花は一重で実生しても斑の継続は殆ど見られません。
-
朝焼け2
朝焼けとして流通しているものですが朝焼けに比して後に少し斑が暗みます。花は多弁へテロで八重化しやすく、むしろ別な名をつけたいものです。
-
朝焼け3
これも朝焼けとして入手したものですが、むしろ九州産の散り斑に近似しています。花はまだ確認していません。
-
朝焼け4
これも朝焼けとして入手したものですが実生で斑の継続が可能です。朝焼け2に似た雰囲気があり同一品種かもしれません。
-
天狗の翔
天狗塚の散り斑として人気の品種で、菱形のやや枝垂れた葉に白の散り斑を全面に染めた雄大な景を持つ逸品です。
-
天狗散り斑
少し引きつりのある細い葉に白の散り斑を絡めます。全体にこじんまりと纏まった中型種で、作り込むと多弁へテロの花を開きます。
-
凪帆錦
凪帆園さん作出の実生選別斑で、白の散り斑は少し暴れますが切れ斑を絡め華やかです。花は多弁へテロで力が付くと八重化します。
-
白虎
大きく横に広がる性質を持つ白散り斑で、作り込むと大胆な白斑を出しやすく株立ちにすると華やかです。丈夫で増殖も良い美品です。
-
白山峰
株立ち性の大きく広がる白散り斑で、花は力が付くと八重化する多弁へテロの性質があります。切れ斑を絡め株にすると豪華です。
-
白鳳錦
紺地の強い葉に白い散り斑縞を大胆に染めたコントラストの良い品種です。綺麗な斑ですが成長が遅く殆ど増殖しません。
-
八海山実生
肉質の幅のある葉の全面に粉状の白散り斑を染めた覆輪状の味わい深い斑入りです。赤軸も良く映えています。
-
八重垣×小雪のF2
八重咲きの銘花八重垣に白散り斑の小雪を交配した交配F1からの選別です。早く花を見たいものですが斑が派手すぎて成長は遅いです。
-
八重垣系斑入り
八重咲きの銘花八重垣と白散り斑との交配分離から選別したもので、斑は少し暴れますが花は八重多弁系の2芸品です。
-
夢時雨
やや大柄の白散り斑で細い葉の全面に白散り斑を流し染めます。おそらく加賀錦や山響などと同系統のものと推測します。
-
利休錦
白散り斑の代表銘花で白黄色に散った斑はのちに萌白色に暗みより芸に深みを出します。芽は細いですが葉は大きく展開して類例無い個性は一目でそれと解る銘花です。
「黄刷け込み斑」
俗に「黄成り斑」と呼ばれる葉に黄色の刷け込み縞や散り斑を現わすタイプの斑入りたちです。この系統はいずれも似たものが多く白散り斑以上に区別のつけ難い斑入りたちです。芽出しの時は殆ど青葉で成長を始めるものが多く、葉の展開と同時に萌黄から黄色の刷け込み散り斑を現わします。この後、気温が上がるにつれてあるものは黄色のままで、あるものは白くなりあるものは暗んできます。時に紅をさすものもあり秋に斑の部分が紅葉するものもあります。黄色みの強い個体は早い時期から葉焼けが始まるので日照管理がなかなか難しい系統です。またキメラ性が強く青葉と黄葉にも分離しやすく、葉全体が黄色くなるいわゆるオバケになり易いのも特徴です。このオバケ状態のものが時々「黄金葉」として売られていますが、遺伝形質の「あけぼの斑」である「黄金葉」とは斑の性質が全く違うキメラ分離による葉緑素の欠乏なので、すぐに葉焼けして枯れてしまう事があり注意が必要です。斑入りの遺伝性は高く、青葉との交配でも遺伝することがしばしばあります。色々と一長一短のある系統ですが四季の移ろいや変化を楽しめる系統でもあります。四国徳島の風呂塔(ふろんとう)の黄刷け込み斑はとくに有名で人気が高く、その他にも北陸加賀や九州などの系統が多く見られます。
-
黄桜
徳島産の黄斑で全体にまとまり良く葉姿も良いものです。芽によっては派手柄を出しやすく黄色もあまり暗みません。
-
無名・G23-02
細かい散り斑状の黄刷毛込み斑で全体に小型でまとまりが良いものです。黄色は後に少し暗んで萌白色に変化します。
-
無名・カラス葉
芽出しの頃に紅の強く出る烏葉タイプの黄刷毛込み斑で葉が固まると紅は薄くなります。節間のある葉は少し伸びやすいものです。
-
無名・中津
四国中津産の黄斑で、少し大柄の葉に鮮やかな黄斑を染めます。葉が強いので日焼けも少ない秀品です。
-
黄雪
小雪の実生から選別した黄斑で、グラデーションの面白い大柄な斑入りです。白斑を絡めることがあり変化の妙味も楽しめます。
-
黄皇后
九州五木産の纏まりの良い黄斑で、花は比較的安定した多弁へテロの2芸品です。斑柄も安定して草姿も良い一級品です。
-
家
丸葉でエンボスの深い黄刷毛込み斑で葉の固まるころには鮮やかな黄斑になりとても美しいものです。黄斑は後に冴えて明るく華やかです。
-
無名
後冴えの黄刷毛込み散り斑で芽出しの頃は緑ですが、開花の頃から斑が見えて最後は黄白斑に変化します。
-
無名・五木No.2
五木産の大柄な黄刷毛込み斑で、芽出しの頃はぼんやりとした斑ですが後に萌黄から黄色に変化します。花も大輪です。
-
無名・五木No.13
これも五木産の後冴えの黄刷毛込み斑です。とても大柄のもので花も少し多弁へテロの形質を持っています。
-
無名・五木No.14
大柄の黄刷毛込み斑で紺地が強く葉脈が深いので黄斑とのコントラストも良く迫力があります。葉質が良いので葉焼けもしにくいものです。
-
無名・五木No.16
やや細葉ながら紺地が強く黄斑の冴えも良いもので、苗でも迫力を感じます。作り込んでみたい綺麗な逸品です。
-
無名・五木R3-01
丸みのある肉厚のエンボスの深い葉に黄色の散り斑状の刷毛込み斑を細かく散らします。かなり大柄になりそうな期待の新鋭です。
-
五木の誉
五木の多弁へテロの坪で選別された黄刷毛込み斑です。とても大柄な迫力ある株で、花も大輪で多弁へテロの形質を受け継いでいます。
-
五木幻想
五木No.5と呼ばれていた個体で、写真は芽出しですが後に紺地が強く黄斑もグラデ―ションを絡めた幻想的な趣を見せます。
-
無名・五木大輪
五木産の黄刷毛込み斑で後冴えの大柄な個体です。葉は少し波打って葉間があり花は大きな一重です。
-
甲斐三景
山梨産の黄刷毛込み斑で全体の纏まりが良く、紺地の強い黄色の刷毛込み斑は作により白斑を絡めて三色の斑色に分離します。
-
無名・高知明神山
典型的な四国産の黄刷毛込み斑で、黄斑は葉が固まってもあまり白くならずに黄色を保ちます。草姿の良いものです。
-
彩女
実生作出の黄刷毛込み斑で、紺地に黄刷毛込み斑に更に白斑と銀のりを絡めるので4色と呼んでいたものです。
-
山吹の誉
四国産の典型的な黄刷毛込み斑で、丸みのある葉に優しく流れる黄斑はのちに白く変化する後冴え。グラデーションが美しいです。
-
山吹の里
九州産の立ち上がりの良い黄刷毛込み斑で花はやや多弁へテロの性質を持ちます。少し暴れますが全面に斑が散るととても良い雰囲気です。
-
朱鷺の舞
佐渡産の黄刷毛込み斑で花はほんのり紅覆輪の2芸品です。斑は作により左右されやすく、毎年斑の濃淡が変化します。
-
小林錦
刷毛込み斑の産地として有名な風呂塔の初期の銘花です。斑の実生継続性が高くやや柔らかい草姿は女性的で好まれます。
-
信濃の春
長野県産の大柄な黄刷毛込み斑で、この地方の株は全体に大柄ですが花は小ぶりのものが多く見られます。やや高地性です。
-
信濃紅輪
長野産のやや大柄な黄刷毛込み斑で、赤軸で紺地が強く斑は花後に黄白色に変化します。花は濃色の紅覆輪の2芸品です。
-
聖
四国産の黄刷毛込み斑で少し葉に間隔があり横に広がる性質があります。黄斑は鮮やかですが黄葉や青葉を出すこともあります。
-
雪見桜
広島産の黄刷毛込み斑で、少し枝垂れた葉姿とグラデーションがとても優しい雰囲気を醸し出します。陽を採ると紅を絡め幻想的ですがやや弱体です。
-
祖谷黄龍
全体に纏まりの良い祖谷産の黄刷毛込み斑で、花は多弁へテロの形質が少しあります。丈夫で育てやすい入門種です。
-
凪帆錦実生
凪帆錦の実生分離から選別した黄刷毛込み斑のタイプです。黄斑としては育てやすく丈夫ですが、花はまだ未確認です。
-
馬木の華
広島で選別された黄斑で、斑は少し暴れますが花は芽出しにクリームを帯びた多弁へテロで、小花弁には紅を絡める4芸品です。
-
馬木錦
馬木の華の兄弟株で、蛍光色の黄斑がとても美しくお洒落な斑入りです。花も少し多弁形質があり、作り込むと多弁へテロになります。
-
富嶽
富士の裾野で選別された萌黄の黄刷毛込み斑で斑は後に暗みます。花は力が付くと多弁へテロ化しやすく、同坪品も数タイプ見られます。
-
無名・風呂塔
四国風呂塔産の黄刷毛込み斑です。赤軸で芽出しの黄色とのコントラストが良く、節間は少し間延びします。
「紺散り斑」
紺散り斑は葉に濃緑色の縞斑や散り斑を染め流したもので、葉の全面に散ったものや流し染めたものが多く見られます。芽出しから葉が広がるまでは比較的綺麗に斑が見られるものですが、後に葉の地色が深くなるにつれて暗みが出て渋い味わいに変化します。芽出しが緑で後に地色が抜けて紺地を現わすものも見られます。比較的地味な一群ですが大胆な斑柄や繊細な斑柄のものまでヴァリエーションがあり味わい深いものです。
-
無名
四国産の紺散り斑で、黄緑色の葉の全面に濃緑色の細かい霧のような散り斑を散らした吟味ある斑。後に暗んで夏には緑になります。
-
無名・キムラ22
紺地の強い緑の葉に萌黄斑を散らします。明るい作場の方が斑の出やいすもので、花はやや多弁化する傾向にあります。
-
無名・キムラ44
少し波打つ葉に萌黄の散り斑を流し染めたもので、ほんのり紅覆輪ヘテロの綺麗な花を開きます。四国産ですが広島産の「水鏡」によく似ています。
-
金剛錦
新潟で作られていた紺散り斑で明るい萌黄色地に紺の散り斑を全面に染めた艶やかな斑芸です。コントラストが良く、草姿も美しいものです。
-
景虎
芽出しから白黄色で徐々に暗んで黄緑地に細かい緑の散り斑を絡め夏には紺地が強くなります。
-
景光
萌黄色の芽出しから葉の固まるころには黄緑地に紺緑色の散り斑をリズムよく散らします。すっきりとした草姿で見飽きぬ美品です。
-
戸木の紺散斑
この名で知られるもので、やや大柄の萌黄色の葉に強い紺地の散り斑とののグラデーションが味わい深いです。
-
三顧の礼
広島産の大型の紺散り斑で、大胆に染まった紺地と萌黄斑のバランスが絶妙です。実生でもよい個体が拾えます。
-
無名
以前、紺散り上として入手したもので産地は不明です。明るい黄緑地に散らした紺散り斑がとても華やかな逸品です。このタイプは夏には暗みます。
-
神秘
九州産の紺散り斑で、萌黄ベースに紺の散り斑を染めて更に白の縞斑を絡めた斑の上に斑を染めた珍しい三段芸です。
-
神秘×女神
神秘に佐渡産の大型種女神との交配からの選別です。神秘に似た紺地ですが白は出ず、草丈も伸びてすっきりしています。
-
無名
古いもので黄緑地に緑の散り斑を全面に染めた小型種です。芽吹きが良く株立ちになりやすいので作り込むと華やかです。
-
夢幻
徳島産の古い紺散り斑で、丸みのある葉に砂子肌の紺散り斑を染めた吟味ある芸です。斑はのち暗みですが実生継続性は高いものです。
「砂子斑」
砂子斑は葉の全面に細かくスプレーで吹いた様な砂粒状の斑を散らしたもので、葉の先端に集中するものからスプレーで吹きかけた様なものまでいくつかのタイプが見られます。実生継続性も高く、実生でも比較的親と同様の斑芸を選別しやすいものでもあります。芽出しの頃に白く上がる系統のものもあり、どちらかというと芽出し前後は明るい環境で栽培した方が良い葉芸をするものが多く見られます。派手なものは後暗むものが多いと感じます。
-
雲上の光
北陸で選別された透け軸の砂子斑で、芽出しは白く上がり展開しながら暗んで渋い味わいになります。作り込んで白地幅が出る味わい深い芸です。
-
黄金郷
芽出しから黄色地に緑の細かい砂子斑を散らして後に黄緑ベースに少し暗みます。派手な芸ですが夏には暗みますのでゆっくりですが栽培可能です。
-
黄金郷実生
黄金郷の実生選別で、砂子斑の中に白の散り斑を絡めます。黄金郷は時に実生で3色斑が出ますが、継続性や固定率は不明です。
-
五木の霧
大柄の砂子斑で、黄色ベースの葉の主脈に沿って緑の霧状の斑を全面に流し染めます。不思議な味わいの葉芸で夏まで砂子は残ります。
-
西祖谷縮緬
四国産の萌黄砂子斑で、葉は鑢葉状の羅紗地で黄色ベースに緑の濃淡の砂子を流し染めた深い葉芸です。成長は遅いものです。
-
無名
東祖谷産の砂子斑です。柔らかくふわふわした葉質の白砂子斑で見飽きぬ味わいがあります。斑は芽出しが白く後に萌黄色に変化します。
-
極
紺地に白の砂子斑を全面に染めた素晴らしい葉芸です。古い品種ですが数は少なく、増殖もあまり多くありません。実生は継続します。
-
白天狗
天狗の散り斑の中の一つで、黄色ベースに緑の砂子斑を霧のように散らした安定した葉芸です。ベースは後に萌黄になりますがあまり暗みません。
「黄金葉」
芽出しから黄色一色で上がって後に萌黄や緑葉に変化する転覆芸です。芽出しの頃は一見派手に見えますが夏までには暗むものが多く目立たなくなる個体がほとんどです。良く黄刷毛込み斑の黄斑になったものを黄金葉として扱われていますが、それらは暗まずに葉焼けしやすくやがて枯れますので、入試の際は見極めと注意が必要です。
-
無名
典型的な黄金葉で展開後はこのような感じに仕上がります。初夏の頃には緑が深くなり普通種と区別しずらいほどに暗みます。赤軸の美麗種です。
-
無名・黄花系
芽出しは綺麗な黄色ですが次第に暗んできます。葉間があり花もクリーム色の特徴ある品種で、やはり夏までには緑色に暗みます。
-
小金丸
ややあけぼの性の黄金葉で葉が暗んだ後も少しグラデーションを残します。葉緑素が少ないので根の成長が弱く作り難いものです。
-
無名
鈴鹿産の黄金葉で芽出しは黄色で後に萌黄色に変化します。葉姿の美しい個体でゆっくりですが増殖します。
「三光斑」
葉の一部や葉脈の部分の表層や第2層に剥離がおきて斑を現したもので、剥離の状況により葉の各部が紺地や萌黄、黄色や白の斑に変化し、時には銀のりを絡めて艶やかな美しさを醸し出します。とても美しい芸で人気も高いものですがその種類は少なく、また、作り込んでいるうちに剥離の部分が修正されて普通の葉に戻ってしまうこともしばしばです。剥離により葉緑素が少ないので根の伸びも悪く長も遅々としているので余り一般的ではないかもしれません。リスクを背負った葉芸ですので栽培にはそれなりの覚悟が必要です。とはいえ、輪郭に覆輪状の剥離を見せた三光覆輪などはとても美しく、つい引き込まれてしまうのも仕方ないかもしれません。ここに紹介の品種たちもいつまでその葉芸を保ってくれるのか、ハラハラドキドキの葉芸でもあるのです。
-
みずほ
九州産の三光覆輪斑で、銀のりを絡めた黄緑色をベースに白覆輪と紺散りを絡めます。作により葉幅が変化しやすく花も少し緑を帯びます。
-
時雨三光
九州時雨山付近で見つかった三光覆輪で、大柄で幅広の葉に萌黄覆輪を染めた葉は銀のりを絡めてとても美しいものです。
-
天狗の祝宴
四国天狗塚産の三光覆輪で、銀のりを敷いた灰緑色の葉の輪郭を白覆輪で縁取ります。まだ見つかって日の浅い品種です。
-
無名・西祖谷産
四国西祖谷産の銀のり三光覆輪で、覆輪の剥離が強いので葉の引きつりが激しく現れます。これからが楽しみな品種です。
-
祖谷雷神
四国産の三光覆輪斑で、銀のり部に黄色と深緑色の三光斑を染めたとても美しい品種です。幻想的な色合いに息をのみます。
-
天狗の富
四国産の三光覆輪斑で、丸みのある葉に緑、萌黄、黄色と3色に染め分けた美しいものです。剥離により葉の縁は少し内側に巻きます。
-
無名・三光斑
萌黄三光散り斑と萌黄三光覆輪とに芽別れしたもので、三光散り斑から三光覆輪への変化の様が良くわかります。
-
肥の国
九州産の大柄の萌黄三光覆輪斑で、銀のりを絡めた萌黄ベースに黄色の覆輪を絡めます。時に紺地も含んで安定した銘品です。
-
風の彩り
四国産のやや大柄の三光覆輪斑で、紺地のバランスが良くとても美しく三光斑を引き立てています。草姿も美しい逸品です。
-
風神
紺地の強い三光覆輪斑で、覆輪部分は雪白で中間に剥離の入った灰緑色が入り渋い味わいの葉芸です。
-
夢三彩
もっとも有名な三光覆輪で、白地幅かあり紅を絡めたとても美しい三色染めを見せます。古い品種ですが数が殆どなく貴重なものです。
-
緑三光タイプ
九州産の三光散り斑から変化した三光覆輪です。色対比の美しい品種ですが葉の全面に銀のりを絡めているので成長は遅いものです。
「三光散り斑」
主なものは葉脈に沿って剥離が起きるもので、散り斑状の斑の輪郭や斑の一部に剥離を絡むもので、それにより葉の引きつりもしぼしぼ見られるものです。銀のりを絡めた萌黄系のものが多く見られますが、一部には黄色や白の散り斑に剥離を絡めるものもあります。また、三光斑の部分には紅を指すものも多くあります。育てて株にすると芽変わりで三光覆輪斑を生むものもあり、また、実生継続が可能なものも多く、実生によりさらなる三光散り斑を生み、一部は三光覆輪に変化するものも見られます。タネ親としてはとても面白いもので、三光覆輪を生む唯一の葉芸とも言えます。
-
無名
萌黄の三光散り斑で、芽出しの頃には剥離部分には紅を絡めてなかなか美しいものです。葉脈剥離タイプの典型的な三光散り斑です。
-
無名
一見、普通の黄散り斑に見えますが葉脈の一部に剥離が見られ葉に引きつりも見られます。実生すると面白い系統です。
-
無名
これも葉脈の要所に引きつり状の剥離が見られます。黄斑タイプの三光散り斑は剥離部分に紅を乗せることが多くあります。
-
無名
やや大柄の三光散り斑で一部に三光覆輪を絡めています。花は咲き始めにクリームを帯びた多弁系です。株立ちで芽変わりを拾いたいものですが、なかなか増えてくれません。
-
無名
岡山産の黄散り斑ですが、これも良く見ると葉脈に剥離が見られ三光散り斑を現します。このくらいのものを実生すると面白い三光芸が拾えます。
-
錦秋
広島産の萌黄三光散り斑で、陽を採ると剥離部分には紅を絡めます。三光散り斑はキメラ斑より葉脈のエンボスが深くなるので区別は容易です。
-
月光
これも葉に厚みがありエンボスの深い特徴的な三光散り斑です。萌黄ですが葉の縁を中心に黄色の剥離を現す渋い逸品です。
-
天狗三光
四国天狗塚産の三光散り斑で、斑は少し地味な萌黄ですが剥離部分が深く、実生により良い三光系の斑を多く生んでいます。
-
天狗萌三光
一見萌黄散り斑に見えますがこれも天狗塚の三光散り斑です。葉の周辺や脈の一部に剥離が見られ引きつりも見られます。
-
土佐茜
大胆に葉脈に沿って剥離し、その部分に紅を絡めた逸品です。古い品種で親の現存数は殆ど無いですが、実生継続率はかなり高いです。
-
三光散り斑
奈良県産のもので、青軸系で三光覆輪と三光散り斑を絡めた銀のり三光です。常にこの芸を保ちますが成長は遅々としています。
-
白竜・実生
白竜は白黄の散り斑ですが実生によりこのような萌黄三光散り斑が生まれています。葉の輪郭部分が特に強く引きつりも見られます。
-
無名・北富士
北富士産の萌黄三光散り斑で一部に三光覆輪を混じえます。北富士にはこのような三光斑が時々見つかりますが、比較的後暗みも多いです。
-
羅紗三光
羅紗地の葉の全面に三光散り斑を散らした珍しいものですが、銀のりを絡めた斑芸が強すぎてこのタイプはなかなか成長しません。
-
竜神
萌黄の散り三光斑ですが、葉脈や輪郭を覆輪状に剥離させた見ごたえのある葉芸です。実生継続性が高い芸を持つ秀品です。
「銀のり三光斑」
本来の斑入りではなく剥離による銀のりが斑の様に見える、ある意味ヤマシャクヤク独特の葉芸です。主なものは葉脈に沿った剥離ですが、中には中央脈に沿ったものや葉の前半部に集中したものなども見られます。品種によっては暗みやすい銀のりもありますが、何となく味わいのある芸でもあるのです。
-
無名・四国A
古くから栽培されている四国産の銀のり三光斑で、おそらく「影富士」と呼ばれているものと同一と考えます。銀のりは全面に出て鮮やかです。
-
春紅錦
広島産の銀のり三光斑です。少し葉間があり、銀のりとしては紺地が強くコントラストが良いもので全体のバランスも良いものです。
-
無名
萌黄地に緑の散り斑の様に見えますが実際は銀のりの剥離斑です。芽出しの頃は芽による濃淡の対比が面白いものですが後に暗みます。
-
無名
九州五木産の大型の銀のり三光斑です。大きな葉に大胆に抜けた剥離は面白い味ですが夏には少し暗みます。
-
滝
中央脈から外に散るように銀のりを散らしたとても不思議な葉芸で、一見、葉模様のようにも見えます。良芸では葉元に強い引きつりを現します。
-
熊野小紋
奈良県産のやや小型種で、やはり中央脈から外に散るように剥離を現しますが、剥離が葉の基部のみなので葉の変形が無く優しい雰囲気が良い秀品です。
「その他」
主だったものは本来の斑入りとは異なります。遺伝的なものや劣性ウイルスによると言われるもの、レトロトランスポゾンによると思われるものなど、本来の斑入りとはチョット異なった様々な葉芸たちです。
-
偽覆輪斑
葉の縁に覆輪状に黄色の輪郭を現すもので、主な偽覆輪はこの個体の様に小さな黄色のホタル斑の様な集合体で縁取って覆輪斑の様に見えます。
-
偽覆輪斑
葉の先端半分ほどに綺麗に覆輪が回っています。同じ偽覆輪でも黄色のシミが少ないのですっきりと仕上がります。実生継続も容易です。
-
祖谷王冠
偽覆輪の幅があり黄色の鮮度が良い個体で偽覆輪としては最上位のレベルです。葉にも丸みがあり幅のある明るい偽覆輪を更に引き立てます。
-
祖谷王冠・実生
双子葉の偽覆輪は単子葉の覆輪と異なり周縁キメラではなく遺伝子信号によるものと考えます。したがって実生継続は可能で、高確率で継続します。
-
偽覆輪斑入り
解り難いですが偽覆輪を絡めた中に萌黄や剥離の様な本斑を絡めます。見た目のイメージで好みの分かれるところですが珍しいものです。
-
白雲
砂子状の不規則な黄色のモザイク斑を全面に散らすもので、劣性ウイルス説もありますが、個人的にはレトロトランスポゾンによるいたずらと考えています。斑は後に少し暗みます。
-
白雲タイプ
黄色をベースに紺緑色のモザイク散り斑を全面に散らします。これもレトロトランスポゾンによる悪戯と考えます。実生で同じタイプの発生も可能です。