ヤマシャクヤク・花物

ヤマシャクヤクの花は白一色と思われていますが、実際はほんのり紅を帯びるものや紅覆輪、多弁花や八重咲きなど、多彩な花が発見・増殖されています。
ここではそれらの花変わりとその特性を交えてご紹介します。


「色変わり」
標準の花色ではなく、様々な特性を持った花色変わりの花たちです。いずれの花色も劣性遺伝と考えますが、同系統同士(ホモ)の場合はF1でも花芸を引き出すことが出来るものが多く見られます。

 

「八重咲き・半優性多弁花」
花弁の数が増えて多弁花するタイプのもので、作り込むと100枚を超える多弁になり素晴らしい花芸を見せてくれます。半面、株の栄養状態などの条件に左右されやすい芸でもあり、株に力が無い時や若い苗、実生初花などでは標準花やほんの数枚の小さな弁化が見られる程度の花になり、その見極めは容易ではありません。このタイプはどんなに弁花能力が高くても基本オシベ、メシベは残りますのでセルフ実生も可能です。したがって、自生地では坪で見つかることも多く標準花と交配してもF1で八重の形質を得ることが可能です。ただし、ヘテロ形質が強い多弁系八重咲きなのでこの系統同士のみの交配からフルダブルの花を作ることは容易ではありません。更に、あくまで半優性と思われるので実生により八重化した個体はヘテロの多弁形質は残りますが、標準花の個体にヘテロの多弁形質があるかどうかは疑問です。多弁形質は株の状態により左右されますので、せっかく咲いた交配実生の初花が標準花の場合、作り込んで多弁になるかどうかの最初の選別の見極めが難しいのもこの系統の面倒なところかもしれません。



「八重咲き・劣性ホモ多弁花」
力により多少左右されますが殆どの場合標準花は咲かずに八重化するもので、主なものはメシベは少し残りますがオシベはありません。非常に弁化能力が高いものですがシベの変化は劣性遺伝によるものが多く、交配F1ではほとんどが標準花となり変化花は咲きません。メンデルの法則による隔世遺伝の形質が強く、F1の分離や同系質との戻し交配によって八重咲きは発現します。フルダブルの作出を考えるとこの形質は外すことが出来ず、重ね続ければ必ずフルダブル作出の近道にはなると考えます。個人的には八重ヘテロと劣性ホモとの交配が最も楽しめると考えてはいますがはたして…。