福寿草の仲間は大別するとフクジュソウ(4倍体)、ミチノクフクジュソウ(2倍体)と中間タイプ(3倍体)に分かれます。それぞれの倍数体が異なるので、フクジュソウどうし、ミチノクフクジュソウどうしでは交配継代も可能ですが、フクジュソウとミチノクフクジュソウとの交配ではそのほとんどが3倍体になり、F1以降の交配はほぼ不可能になります。したがって、交配により新花作出を考えると、どの品種がどの倍数体かを知ることは極めて重要です。3倍体の中には交配作出のものに、フクジュソウ(4倍体)の芽変わりにより変化したと思われるものも見られます。
「フクジュソウの名花たち」(4倍体)
芽も根も太く大きく全体に力強さを感じます。4倍体の八重咲きの多くは多弁へテロと呼ばれる半優性的な性質の個体が多く見られます。今のところフルダブルは殆ど見られません。
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阿修羅
標準花の中でも大きな花で、スタンダードなタイプとしては良く目立ちます。
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かぐや姫
東北で選別された多弁へテロです。実生により流通し始めています。
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コメリの幻
珍しい花弁幅のあるガク花です。実生により面白い変化が見られます。
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車屋白
古くより知られる白花の名花です。白花としては育てやすく花型も良いです。
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旭
彩鳳系の花弁のしっかりした白花系の大輪花です。
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王冠
北海道産の花弁裏に色の入らない可愛い花です。実生継続可能です。
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黄花八重
大輪で安定した八重へテロは実生継続性も高く稀代の名花です。
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黄重
纏まりの良い多弁へテロで、丸みのある花は作り込むと十弁化して見事です。
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黄梅
東北産のやや小型の福寿草です。弁化能力が高くやや遅咲きですが独特の雰囲気を持ちます。
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雅楽
希少な品種で、良く出来ると二段咲きの様な弁化を見せます。
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吉田の曙
彩鳳系の大輪花で、ほんのり染めた紅色が上品で味わい深いものです。
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吉野
青梅草の選別花ですが大輪で纏まりの良い美麗種です。
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牛首峠
野生選別の多弁へテロで、幾重にも重なった重ねの美しい八重咲きです。
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金采
咲き始め緑を絡めたすっきりと伸びたフギレ弁の名花です。早咲きです。
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金鯱
青森産の珍しいガク花で、透き通ったような花弁が珍く日が当たるとキラキラ反射します。
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見返り美人
古い品種で、少しガク花的な多弁花は良く出来ると色々な変化を見せます。
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御神楽
俗にいう神流系の花で、作り込むと大輪の多弁へテロは小花弁が乱れ面白い味わいです。
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晃星
花弁が樋状に巻き込む細弁の多弁花で、星咲きのような個性的な趣です。
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紅冬至
冬至の頃に咲く早咲きでほんのり紅花の多弁へテロです。少し癖があります。
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佐渡の幻
佐渡産の大型種で、珍しい細いガク花弁の多弁花です。遅咲きです。
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佐渡素心
佐渡産の花型の良い青軸系素心花です。実生が多く、元株は極めて少ないものです。
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彩鳳系大輪花
彩鳳タイプと呼ばれる彩鳳系の一群です。どっしりとした大輪の系統です。
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彩鳳淡紅
彩鳳系のほんのり紅色を絡めた幻想的な花です。紅の出方は毎年変化します。
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四方田家緑花(皆野緑)
咲き始め緑を絡めた大輪の多弁へテロ。弁化能力の高い花で大輪系八重咲きの親として人気です。
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七変化
多弁へテロの代表品種で、作により変化しやすいですが弁化能力はとても高いです。少し花首が伸びる特徴があります。
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朱印船
旧秩父紅からの古い選別で、花弁幅のある少しくすんだ紅花は独特の雰囲気です。
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朱雀
旧秩父紅からの選別で、緑のガクと紅花との対比がとても美しい品種です。時に多弁化します。
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春の苑
旧秩父紅からの選別で、橙紅花の花は少し緑を絡めて優しい雰囲気です。
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小笹八重
大輪の紅花八重ヘテロで、力が付くとボリュームがありとても豪華な花です。
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小林八重
秋田産の八重ヘテロで纏まりの良い花は弁化能力が高い最高の親になります。秋田産の八重は総じて小ぶりで遅咲きですが、ミチノクではなくフクジュソウがほとんどです。
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信濃金采
金采からの選別で、より多弁化しやすく全体に大柄で迫力があります。
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信濃紅
信州産の紅花で、ゆったりとした雰囲気の良い明るい紅花です。
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榛名二段
写真はまだ弁化の初期ですが、良く出来るとオシベが弁化してへら状になります。
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神流川
神流系のしっかりとした花弁の花です。この系統はヘテロ形質が強く弁化能力も高いものです。
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青森素心
東北産の珍しい素心花です。少し細弁ですが殆ど濁りの無い銘花です。
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青梅草多弁花
東京都産の青梅草の選別で、とても弁化能力の高い多弁へテロです。
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赤衣
神流系の逸品で、裏紅の多弁へテロで開くと小花弁は巻き込み面白い色対比を見せます。
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大沢素心
群馬産の濁りの無い明るい黄色花です。軸やガクは濁り完全素心ではありません。
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秩父紅
紅花の代表的品種です。流通するものは殆ど実生ですが、探すと色の良いものが選別出来ます。
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秩父紅系ガク花
秩父紅の実生から選別されたガクの大きな花で、ガクの緑と花の紅色とのバランスの良いものです。
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旧秩父紅・纏咲き
旧秩父紅の実生からの選別で、ヘテロ形質が強く弁化しやすいタイプです。
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秩父紅・八重咲き
旧秩父紅の実生から選別された多弁へテロの形質の強い花です。紅花八重系はすべて弱体で栽培には気を使います。
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秩父真紅
この名で流通するものの殆どは秩父紅や長谷川紅系の交配実生です。色の安定度は高く、濃紅花も選別出来ます。
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秩父真紅
元親の株分けとの触書の個体です。濃紅色で多弁形質が強く、交配親としても良いものです。
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秩父白
大輪の白花で少しクリームがかった薄い黄色の花はフクジュソウの白花らしい風格を持ちます。
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長谷川紅
花型の良い紅花で、秩父系としては大輪の美麗種です。オシベがリズミカルで賑やかな花です。
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長谷川紅系多弁花
長谷川家の紅花からの選別で、良く出来ると花弁が増えてヘテロ形質が見えてきます。
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鳥海山
裏日本北部のフクジュソウの選別で、細く伸びた花弁が特徴的な大輪花です。
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爪折笠
古い品種ですが先端の折れた短い花弁が特徴的な早咲きです。丈夫で個性的な花変わりです。
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島影竜
佐渡産のガク花で、少し墨を流したようなくすんだ黄緑色の光沢のある花弁を開きます。
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東秩父八重
野生選別の多弁へテロで、作り込むとボリュームのある多弁花を次々と開きます。
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日輪
爪折笠と秩父紅との交配から作出された古い交配品種です。輪生する爪折弁が端正に揃います。
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伯雪
彩鳳系の大輪の白花ですが端正な花型のクリーム白色です。実生では多弁化しやすい個体も見られます。
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柏尾紅
長野産の紅花で、端正な橙紅色の花は個性があります。実生では多弁形質が出やすい花です。
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白牡丹
車屋白の実生選別と言われているもので、長い年月をかけて分離によりヘテロ化したものと思われます。
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白花系底白花
秩父産の白花系ですが、黄クリーム色の花は花弁基部を白く抜いて味わいのある大輪花です。
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斑入り葉
作により左右されますが後冴えの白散り斑のフクジュソウです。少し芸の発現に癖があります。
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姫川素心
新潟、富山県境で発見されたレモンイエローの完全素心花です。大きなガクが特徴的で実生でも遺伝しやすいものです。
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浮雲
神流系の白花で、咲き始めは緑が強く徐々に白く変化していく色移りが味わい深いです。
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武甲丁字
大きなガクと、二段咲きの様な多弁へテロとのバランスが特徴的な花です。実生親としても面白いかもしれません。
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武甲白
秩父白と双璧のフクジュソウの白花で、こちらの方が大輪で花弁は少し細い多弁花です。実生で多弁ヘテロの形質が見られます。
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武蔵の春
青梅草の選別花で、袴に少し濁りが見られる準素心花です。スッキリとした雰囲気の良い花です。
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変化
古くから人気の多弁へテロです。早咲きで小花弁が重なるように端正に揃います。実生すると大輪と小輪に分離します。
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萌春
咲き始めに墨を流したような褐緑色で展開してやがて黄色に変化します。色移りの面白い花です。
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万場
神流系の大輪の多弁へテロで、良く出来ると少し褐色を絡めた花弁重ねの良い八重咲きを開きます。
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無弁花
フクジュソウの花弁の欠落した無弁花で、メシベとオシベに短いガクが少し覗く程度の小花です。
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友白髪
斑入りのフクジュソウで、白い砂子散り斑を全面に染めた美麗種です。斑は芽あたりによって少し動きます。
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陽の輪
秩父産の多弁へテロで、作り込むとオシベが変化して多弁形質を見せます。花弁の纏まりの良い花です。
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流星
神流系の安定した多弁へテロで、小花弁は長く伸びで幾重にも重なります。
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龍勢(吉田紅)
彩鳳系の大輪紅花「吉田紅」の一系統で、花弁幅のある大輪花は迫力があり見事です。
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両神紅花
奥秩父で選別された紅花で、花弁裏が褐色の濃紅大輪花は退色少なく見事です。
「ミチノクフクジュソウの名花たち」(2倍体)
全体に芽も根も細く華奢で繊細です。多花性で茎は四方に斜上します。2倍体の八重咲きの多くはフルダブルで完全にシベが弁化したものがほとんどです。4倍体に見られるような多弁へテロはほとんど見られないため、八重咲きの作出にはどこかで劣性ホモの弁化能力のある遺伝子を拾う方法を探します。
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ガク花C
花弁とガクが紙一重の花で、ガク化が進むと褐色が強く出ます。
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むさしの
黄色の花弁中心部を緑に染めたコントラストの良い二色咲きのフルダブルです。
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花園
山吹色のフルダブルで緑はあまり含みません。むさしのと混同されています。
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三段咲き
福寿草の名花中の名花です。黄色と緑の対比が美しいものです。芽出しが遅く葉よりも先に花を開きます。
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みすず
信州産のフルダブルで、花弁裏の褐色が良く目立つ黄色と緑の二色咲きの大輪花です。
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伊那谷三段
信州産のフルダブルで、スッキリと立ち上がる黄色と緑の二色咲きのフルダブルは草姿も良く見飽きぬ逸品です。
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魚々子
黄色のシベが良く目立つ花弁欠落花で残存花弁がほんの少しあるだけです。イソギンチャクのような花です。
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玉孔雀
珍しい葉花変化の福寿草で、褐緑色の硬い花弁がゆっくりと展開します。オシベはありますがメシベは不稔です。芽は丸芽です。
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玉緑
緑一色の花で、メシベはありますが弁化が進むと不稔です。一時、玉孔雀と混同されていました。芽は丸芽です。
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緑峰
古い品種で「天緑」とは同一品種です。細い葉から延びる花はとても遅咲きで開花の頃には長く伸びます。一時、「玉緑」と混同されていましたが、芽出しが遅く芽は細芽です。
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糸車
阿蘇産のミチノクフクジュソウからの選別です。糸のように細い花弁をスッキリと広げた様はまさに糸車のようです。
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助六
信州産の花弁退化花で、花弁がほとんど退化しているので山吹色の葯が良く目立ちます。纏まりの良い草姿の花です。
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信州姫
信州で選別された鮮やかな黄色の花で、花弁裏の紅褐色がとても濃くはっきりした対比の面白い花です。
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新玉手箱
玉手箱の実生からの選別です。蕾のうちは赤くあがりますが開くと黄色のふくよかな花です。
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新車矢白
車屋白は4倍体ですが、車矢白系は2倍体です。矢じりのような花弁先端部が特徴的で、車矢白の実生選別と言われています。
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諏訪撫子
信州産の花弁先端の切れ込んだ撫子弁です。花弁幅のある明るい春らしい花です。
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菅原
平開しない立ち上がった短い花弁が特徴的な花弁退化花です。フキタンポポの様な花ですね。
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大和撫子
信州産の撫子弁の逸品です。花弁幅のあるふくよかで切れ込みのしっかりした撫子弁は風格すら感じます。
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青龍
済州島フクジュソウからの選別で、ふくよかで端正な花弁先端を白く抜いた特徴的な銘花です。
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済州島円弁花
「青龍」に似ていますが多弁でとても端正な花です。やはり先端部を少し白く抜いたグラデーションが味わい深いです。
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日の出
ミチノクの有名な紅花で、咲き始めの曙色が何ともお洒落な品種です。ミチノク系紅花の交配親としても紅の分離比が高く重宝な品種です。
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日の本紅
古い品種ですが紅花としては落ち着いた安定感のある花です。やや弱体で癖があるので現存数は多くはありません。
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白楽
白花の代表的品種で比較的流通しています。落ち着いた雰囲気の端正な白花です。
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白虎
新車矢白からの選別で、とにかく白い色を基準に選ばれた個体です。青光沢のある素晴らしい白花です。
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白寿
新車矢白系からの選別と思われますが、比較的育てやすく流通しています。2倍体の白花は芽が細く心細いですが花付きは良いです。
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弁天(弁財天)
スッキリと伸びた花弁は咲き始め少し黄色味を感じますがすぐに白く変化します。実生は黄花になりやすい性質があります。
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八街黒
千葉県産のミチノクの小型種で、花弁裏の黒々とした色彩と黄色い花とのコントラストはなかなかのインパクトです。
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連雀
信州産のフルダブルで、黄金色の花弁は先端が桜弁で中心を緑に染めます。もっとも遅咲きの福寿草です。
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シコクフクジュソウ・阿波紅A
珍しいシコクフクジュソウの紅花で、大輪の曙色の花はとても美しいです。
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シコクフクジュソウ・阿波紅B
発色の良い紅花で全体に小型のものです。少し弱体でなかなか大きくなりません。
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シコクフクジュソウ・素心花
野生種の三章から選別された素心花で、無毛で艶のある素心はとても美しい名花です。
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シコクフクジュソウ・素心花
素心花の実生から選別した大輪花です。無毛なので艶のある大きな花はなかなか目立つ逸品です。
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シコクフクジュソウ・へテロ花
とても珍しい2倍体の多弁へテロです。毎年安定してこの花芸を見せてくれるもので、極めて貴重な2倍体の親です。
「3倍体の名花たち」
3倍体の花たちは基本メシベは不稔です。オシベを利用するという話もありますが、結実してもF1どまりになると思われます。また、フクジュソウの芽変わりからの3倍体は草姿や特徴はフクジュソウ型ですが、フクジュソウとミチノクフクジュソウとの交配作出による3倍体の殆どが芽は太いですが草姿はミチノクフクジュソウ型なのは面白いところです。
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紅撫子
紅花の3倍体で、花弁先端の切れ込んだ撫子弁の紅花です。紅花としてはとても丈夫なもので庭植でも増殖します。
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撫子
紅撫子から変化して黄色に芽変わりしたと言われます。栽培は丈夫で鉢でも庭植でも良く出来ます。
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紅孔雀
紅撫子の芽変わりで花弁が幾重にも多弁化した個体です。力により左右されやすく、弱ると紅撫子に戻ります。
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火の鳥
交配による3倍体で、大輪の紅花は力が付くと多弁化して迫力があります。
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魁
早咲きの3倍体で力が付くと多弁へテロの顔をのぞかせます。花弁が厚く型崩れしません。
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金世界多弁花
金世界の芽変わりで、花弁のフギレが戻り多弁化した個体です。花弁重ねの良い花です。
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金鵄
細いフギレ弁は不規則に伸びながら幾重にも重なります。独特の雰囲気を持つ銘花です。
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紅寿
交配による3倍体です。色むらの無い紅花で花弁に丸みがあり株立ちにしてもそろって咲くので型崩れしません。
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紅真珠
交配3倍体です。赤の鮮度が良く、大輪の花は力が付くと多弁化します。少し弱体です。
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紫雲
花弁裏を墨を流したような褐色に染めた花で、白い花との対比がとても味わい深い銘花です。
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朱宝
交配3倍体です。朱紅色の重ねの良い大輪の花弁は色あせることなく最後まで美しさを保ちます。人気の名花です。
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初音
交配3倍体です。とても早咲きの大輪花で、加温しなくても元旦に咲く花を狙った交配です。
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親知らず
金覆輪系の3倍体福寿草の芽変わりです。個体により素晴らしい弁化を見せますが、選別芽により芸は変化します。
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大鳳
福寿会系の芽変わりからの選別で、幾重にも重なった花弁は円を描きとても美しい花姿です。
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秩父の雪
白花系の交配3倍体です。乳白色の端正な花はやや小ぶりですが優しい雰囲気です。
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昼夜牡丹
花弁裏を褐色に染めた大輪花で、開くと黄色で閉じると褐色になるのでその名が付きました。
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白宝
交配3倍体です。大輪で端正な花型の白花ですが、3倍体なので育てやすく株立ちにして楽しめます。白の安定度も高い銘花です。