「ヤマシャクヤクの花芸」
近年ではヤマシャクヤクの人気は斑入り葉にとどまらず紅覆輪や淡いピンクを帯びた色花、花弁が多弁化したヘテロ形質のオシベやメシベの残る唐子咲きや八重咲きなども多く発見されて栽培されています。これらは交配により新しい花の作出や斑入りとの融合などを目指して多くの交配も行われ、マニアの間でヤマシャクヤクの人気にさらに拍車をかけています。斑入りの交配や遺伝形質については先に述べたとおりですが、ここでは山野草としても人気のヤマシャクヤクの花物の交配や遺伝形質についてこれまでの経験からわかる範囲で記してみたいと思います。これらを知ることは「ヤマシャクヤクの新しい時代」に繋がる第1歩です。想像力を最大にして新しい花創りをするのもこれからのヤマシャクヤクの楽しみ方の一つなのかもしれません。
「2種類の八重咲き」
ヤマシクヤクの八重咲きと一口に言っても、実際は2種類のタイプの八重咲きが存在します。
どちらも育種親としては利用価値は充分ですが、使い方は異なりますので特性の見極めが大切です。
-
半優性型八重咲き
株の力や成長の度合いにより花弁の数が変化します。通常はオシベもメシベも存在してセルフ実生も可能です。力がないと標準花になりますが、多弁形質は半優性でF1でも遺伝します。
-
劣性ホモ型八重咲き
花弁の重ねの良い八重咲きでほとんどの場合オシベが弁化しているのでオシベはありません。メシベは少し残っています。弱苗でも八重咲きがほとんどで、劣性ホモなのでF1の分離(F2)で遺伝形質は出現します。