夏眠性球根ラン

「夏眠性球根ランとは」
欧州やアフリカ、オセアニア等には夏に休眠するタイプの球根性の自生ランが多く見られます。
それらの一部はときおり輸入されて、近年は様々な品種が無菌培養などの技術により栽培生産されています。そして、それぞれにそれぞれの特徴があり、特徴的な花や草姿の面白さを味わう事が出来、それが人気の原動力の一つとなっています。

「主な仲間」
オーストラリアにはテリミトラ、プテロスティリス、カラデニア、デュウリス等、欧州にはオルキス、オフリス、セラピアス等、南アフリカにはディサ、サティリウム、シノルキス等様々なものが導入されて栽培されています。

「栽培のポイント」

☆植えつけ(植え替え)
休眠中の夏から秋の彼岸ごろまでが良いとされています。それ以降では早いものでは芽が動き始めるので、植え替えの時期を逸したものは成長する芽や根を傷めぬ様に注意したいものです。主なものは球根がドロップアウトするので、休眠中の鉢を空けてみると鉢の下部に新しい球根が集まっています。それを丁寧にとり出して、古い球根のカスやごみを取り除き清潔にします。鉢は球根がドロップアウトするので深めのものが良いでしょう。用土は山野草か市販のウチョウラン用土に水苔の粉を3割程混入すると水保ちと水捌けが考慮されて良いでしょう。植え込みは、最初に鉢底に鹿沼土等の中粒程度のゴロを入れたら最初に培養土を鉢の中ほどまで入れます。そこに球根を配置して、さらに表面まで用土を入れれば完成です。培養土にミズゴケを混ぜているので、軽い灌水でも用土が浮き上がるので、表面に富士砂や焼き赤玉土の5㎜目のものを1列敷くと培養土の浮き上がりを防ぐ事が出来ます。ただし植え込み後すぐに灌水すると、植え込んだ直後の球根が傷んでる場合があります。植え込んだら最初は軽くサッと湿らせて秋の彼岸ごろまでは様子を見ましょう。その後も軽く湿る程度の灌水を繰り返して、芽が動き始めたらたっぷりの灌水をして生長を促します。その後は軽く乾いたらまた灌水を繰り返します。植え替えは出来れば毎年か2年に1回が良いでしょう。

☆鉢の選び方
鉢はあまり硬く焼いたものや釉薬のかかったものは水保ちが良すぎで多湿になりやすいので避けて、焼き締めのものや多孔質の乾きやすい鉢が良いでしょう。球根が深く潜るものなので、出来れば深めの鉢が使いやすいものです。基本的には植え込む球根よりも2回りほど大きめの鉢が成長が良いと感じています。指の第1関節程の大きさの球根でしたら、1球で3.0~3.5寸、3球で4.0寸位の鉢が好ましく、鉢映りも良いものです。

「管理について」

☆置き場
休眠中は比較的乾いた状態を保つので、温度の上がりやすい直射日光は避けて半日陰で涼しく過ごします。芽が出始めたら日あたり良く管理しますが、1日中直射日光にあてては種類によっては葉が焼けやすいものもあります。基本的には午前日位が良いでしょう。その後は休眠までそのままで管理できます。ただし、多湿により腐りやすいものも多いので雨を避けて、冬に成長するので凍らない程度の保護はしたいものです。出来れば屋外では無く、最低限簡易フレームか無加温ハウス等が欲しいものですが、冬季温度は5℃前後が理想であり、室内の日あたりの良い温度変化の少ない場所なら栽培可能です。

☆水やり
休眠中は多湿にせずに週に1~2回軽くサッと湿らせる程度で良いでしょう。秋の彼岸ごろになったら一度たっぷり灌水して芽出しを促します。芽が出てきたら充分に灌水して、その後は表土に乾きを感じるほどまで待って再び灌水する程度が良いでしょう。目安としては2日に1回くらいです。花が終わり晩春になり葉が黄ばんできたら徐々に灌水を減らして休眠に備えます。

☆肥料
芽出し後に葉がある程度展開したら置き肥をします。根の出る前に置き肥をすると根の成長に影響が出ますので、必ず葉の展開後からの置き肥が良いものです。更に成長期は月に1~2回液肥を施すと効果的です。市販の一般用や洋ラン用の液肥が使いやすいものです。

☆病害虫
ウイルスにかかりやすい種類があります。冬場のハウスはアブラムシが発生し易くウイルスの媒介も多いものです。まずはウイルスを媒介するアブラムシや害虫の駆除に努めてください。また、海外からの直輸入の一部にはウイルス株が目立つので注意したいものです。炭阻病や黒斑病も多く見られます。これらは温度不足や多湿、密閉による蒸れ等により発生する事が多いものです。冬季に成長するので、ハウス等では低温多湿による灰色かび病(ボトリチス)も目立ちます。花柄はなるべく、種子をとらないものは早く花摘みをした方が病気の発生は防げます。

「ふやし方」
植え替えの際に分球しているものは株分けをします。実生はフラスコ等を使うので一般的ではないですが、技術の向上に伴い個体の維持には欠かせぬアイテムではあります。
(フラスコから出したばかりのテリミトラ・クリニタの苗)

つづく