セツブンソウ

セツブンソウは節分の頃に咲くと言われ、主に石灰岩の山地や明るい林床、渓谷の斜面などに生えるキンポウゲ科の早春植物です。栽培下では2月の初めごろから開花が始まり、3月には葉が展開して、5月には休眠を始めます。このように生長期間が短い植物ですが、枯れ葉の中から咲く白い花はとても清楚で、山野草マニアのみならず一般園芸家の方にも好んで栽培される人気の高い植物です。
近年では中国地方を中心として、本来は白一色のセツブンソウの花に緑や桃色を帯びたものが発見・選別され、また八重咲きの様な個体も数個体見つかり育種・増殖が可能になり、さらにマニアの心をくすぐる植物へと進化を続けています。
ここでは、そんなセツブンソウの栽培と育種についてご紹介してみたいと思います。

「セツブンソウの栽培」
先にも記しましたがセツブンソウの生長期間はわずか4~5ヶ月です。夏から冬の間はず~っと休眠していますので、いかに短い期間に大きく育てるかがポイントです。また、セツブンソウは球根ではなかなか増殖しないので、タネをまいて増やすことも大切です。各地でどんどんと自生地が無くなりつつある植物です。コツを覚えてどんどん増やしましょう。

「セツブンソウの植え込み」
・鉢
鉢は基本的にはなんでもよいのですが、やはり山野草らしく仕上げたいものなので焼き締め鉢や軽く釉のかかった鉢などがおすすめです。休眠中の多湿を嫌うところもありますので、あまり強く焼いた硬焼きの鉢や肉厚のもの、鉢穴の小さなものは多湿になりやすいので避けた方が良いかもしれません。

・用土
用土は細かめのものが好ましく、一般的な赤玉土の小粒1に対して硬質鹿沼土の小粒1を基本に1:1にすると使いやすいものです。通気や排水を考えて少し硬めの日光砂や軽石砂を少し加えるとさらに良いものです。ゴロは同様の配合の中粒程度のもの(5㎜から10㎜程度)が使いやすいでしょう。

・植え込み・植え替え
植え込み・植え替えは必ず休眠期に行います。夏前~秋前後が良いでしょう。最初に鉢底に防虫網(サナ)を入れてから、鉢の大きさや硬さによって1/4~1/5程度ゴロを敷きます。球根は植え込んだ後は深く潜ったりしないので、鉢のほぼ中程に植えこむとよいでしょう。植え込む位置を決めたらゴロの上に軽く覆土をして元肥を入れます。元肥はマグァンブKの大粒が使いやすく5粒程度でよいでしょう。元肥を入れたら培養土を1~2㎝加えて球根を植えこみます。球根は上下がとても分かりにくいものです。植え込む際に、ポットから抜いた時の上下を必ず覚えておいてください。根の残骸が残っていればそれが下です。もし上下が解らなくなったら球根を横に植えることも可能です。植え込みの際ここだけは気を付けてください。球根を置いたら培養土を入れて完成です。一度たっぷりと灌水して、棚下などの涼しいところで管理します。


「灌水」
セツブンソウの灌水は成長期と休眠期の2パターンに分かれます。地下の動きも含めて、9月下旬から5月上旬までが成長期、5月中旬から9月中旬までが休眠期です。まず秋の声を聞いたら地上に芽が出ていなくても通常の山野草同様に鉢の表面が乾いたら灌水します。秋以降は絶対にカラカラに乾かさないでください。やがて冬が来て早春に花が咲いて、葉が出て、ゴールデンウィーク前後には葉が枯れ始めて休眠に入ります。このころから少し水やりを控えて、常にほんのりと培養土が湿っている程度の灌水とします。ただし、絶対にカラカラに乾かしてはいけません。常に湿り気を感じていることが大切です。

「置き場」
置き場も成長期と休眠期で2パターンに分かれます。まず、年間を通して出来れば雨をよけたいものです。難しい場合でも梅雨時や秋の長雨だけでも避けたいものです。芽出しから開花期までは明るい日差しの下で元気に育てます。ただし、風の強い日や凍結の厳しい日は花が痛みやすいので少し保護してあげるとよいでしょう。葉が展開して茂ってきたら少し明るい日陰か寒冷紗50%下に取り込みます。これは成長期の短いセツブンソウの葉を少しでも長く保ち、球根の充実を図るためです。休眠したら棚下に移動して、涼しい環境で夏を過ごし年末までそのまま管理します。棚下は灌水時の上からの落水などで多湿になりやすいので、落水防止の対策を心掛けてください。

「肥料」
植え込みの際に元肥を入れます。(植え込み参照) また、葉の展開が始まったら葉にあたらぬように置き肥をします。置き肥は園芸用固形肥料を2~3粒、鉢の隅においてください。液肥も効果的です。葉の展開後から2週間に1回、ハイポネックスなどの通常倍率を与えると効果的です。コバイモやカタクリなどに肥料として用いるブドウ糖は、球根の構造自体が違うセツブンソウでは逆効果でむしろ痛める場合もあります。セツブンソウには使わない方が良いでしょう。

「病害虫」
開花期にアブラムシが着きます。また、成長期にはナメクジの食害が見られます。せっかく咲いた花が1日で食べられてしまうので、特にハウス栽培の場合は注意が必要です。多湿による軟腐病や落ちた花びらなどから灰色カビ病が見られます。殺菌剤を一度散布して、落ちた花柄をこまめに取り除くとよいでしょう。休眠中に球根を抜いて乾燥させるとカビが生えて球根が腐ります。あまりカラカラにしないように注意して、抜いた球根はそのまま保管せずに早めに植え込んでください。

「増やし方」
セツブンソウは分球による増殖がほとんどありません。したがって、一番手早い増殖は実生による増殖となります。セツブンソウは結実の良い植物です。蒴果タイプのキンポウゲ科なのでタネが解りやすく、鞘が割れたら採取してタネ蒔きをします。タネはなるべく採取してすぐの採り蒔きが良いでしょう。
球根をカットして増やす方法もありますが、一般的な技ではなく枯れるリスクも大きいのでここでは省略します